Chapter.1からの続き→
●そうなんだ。でも、海のある地でツアーが終わりましたね、今。
「そうですね」
●ちょっとは感慨に浸るところある?
「感慨は特にないかなぁ。ないっすねえ」
●なんでだろうね。
「いやぁ、なんででしょうねえ(笑)。……ステージの上でも言ったけど……今日ライブの前にもらったお手紙とかを読んでたら“今日で終わりですね”的なことがいろいろ書いてあったんだけど、全然ピンとこなかった。そういう気持ちで……いや、どんな気持ちで来てくれても、来てくれる人がいるっていうのはうれしいんだけど、俺としてはべつに“最後がどう”とかそういうのは特になくて」
●なんで? 達成感はあるじゃん。
「達成感ないんだよね(笑)。ないねぇ……達成感ないっす。ない」
●アルバム作って1枚完成するじゃない。そういう時はどうなの?
「それもないっすねえ、うん。何かゴール目指してやってるわけじゃないっすからねえ。だからこの沖縄でツアーが終わるぞ、っていうのを目指してやってきたわけじゃないし。言ってしまえばレコーディングなんて、レコーディングした時点でのゴールだったとしても、その曲自体はツアーなどで歌い続けることでね、また新たな曲の表情が見えてくるものなので」
●逆に育て始める?
「そうそう。だから達成感っていうのはないっすね。レコーディングの時は『ぐっすり寝れるな』とか、そういうのはあるけどね(笑)。いや、毎日レコーディングみたいな感じだから。『今日は夕方まで寝てられる』とか、そういうこと考えたりはするけれども。そんぐらいかな」
●自分の考えてることがひとつのカタチになってほっとしたり安堵したりっていうことはないんだ。
「ないっすないっす。安心とかしたことないっす」
●「安心できたらいいなあ」って思ったことない?
「うーん……安心するのはあまり好きじゃないかなあ。ふふふふ、うん。でもステージの上で一瞬安心することはある。具体的にどういう時とか言えないけど、お客さんがいて俺らがいて、演奏してて聴いてくれてて。で、ある瞬間にふっと……安心っていうか『よかった』みたいなね。バンドやっててよかった、音楽やっててよかった、生まれてきてよかった的なことを、一瞬思うことがあります」
●それは自分の存在が許されてる感じに近いのかな、感覚的に。
「許される感じとか許した感じとかもあるし、確認した感じもあるし。まあでも、そんな定義づけられるもんじゃないかな」
●今回の『ユグドラシル』もそうだし、まあ言ってみればずっとそうなんですけど、藤原の曲は孤独を意識したところから始まる歌が多いと思うんだけど。孤独を意識し始めたのはいつぐらいからなの?
「え? いまだに意識してないすよ(笑)。ま、(孤独が)詞になったっていうことじゃないかな。……孤独とかっていうとちょっとリリカルじゃないっすか。そういうのはけっこう……なんつうんだろ、モラトリアム世代? とかにはすごく最適な自分プロデュースの言葉じゃないっすか、『俺って孤独なんだよな』、『私って孤独なの』って」
●そうだね、ナルシシズムの象徴。
「そうそう。で、それに対して『何言ってんだおまえ?』って言う人もいるし、『ああ、そうなんだ。でも大丈夫、僕がついてるよ、私がついてるよ』って言いたくなっちゃう人もいるだろうし。そのテの流れがすごく嫌いなの、どっちに転んでも。『何言ってんだ?』って否定すんのも嫌だし、『大丈夫だよ』とか言ってあげる感じも嫌だし。だからその事実に……“ひとり”っていうことにリリカルな感情があるのではなく、それはあくまでもただの事実、現象、それに過ぎないと思ってますね」
●ただ、孤独に自分で気づいてしまうと、人はやっぱり動揺すると思うんだよね。だからこそ、それをリリカルにしていったり何かにしていったりするんだけど。フジは音楽にしていったわけじゃない、そういうものを。
「うん」
●だからもしかしたらモラトリアムにいくのも嫌だし、文学にいくのも嫌だし、だからこそ音楽にしていったのかなっていう気もするんだけど。
「音楽になった理由っていうのはあんまりよくわかんないけど、俺が“孤独”って言葉に対して思うのは、マイナス的な要素でもなくプラス的な要素でもなく、ひとつの事実であって現象であって、否定的になる必要もないかなと。ただ、受け入れる必要はあるかなと。例えば僕はすごくメンバーにも恵まれてるし、家庭環境も別に悪かったわけじゃないし。で、僕以上にそういうところで恵まれてる人もいるだろうし、人によっては生まれた時から生き別れみたいな人もいるだろうし。でも、そういう人であっても前者の人であっても、みんな単一で生きてるんじゃないかなと。単体でね、単体の生き物としてちゃんと生きてるんじゃないかなと。誰かのアドバイスに助けられてっていうのもあるだろうけど、誰かのアドバイスを自分の意志で汲み取ったわけですから、そのアドバイスを自分で実践してみようというふうに自分で決意したわけですから、それも自分の力だと思う。その程度のことにしか思ってない」
●そういうことを意識し始めたのは、いつぐらいからなの?
「あ、それはもう小学校ぐらいからずっと思ってた。文集の“なかよし”とかそういうタイトルがすごい嫌だった。なんでいちいち『俺達なかよしだよね』みたいなさ(笑)、嫌だなあと思った。みんなで力を合わせて何か出来たぞっていうのも素晴らしいけど、それは単独の生き物達それぞれが“力を合わせる”っていうのを独断で選んだわけですから、最初に。そこをもっとみんな自分で意識するべきだし自覚するべきだし、教育する側もそれを評価するべきじゃないかなとか、ずっと考えてた」
●小学校時代から?
「そうだね。ま、こんな難しい言葉とかは言えなかったけど、そんなようなことを考えてた。だから教科書とかはよくわかんなかったっす。美術の教科書とかすごいわかんなかったし、書道のお手本とかもすごいわかんなかったし。あのとおりに書こうなんて思ったら誰でもできるし。俺、半紙の下に敷いたんですよ、お手本を。超かしこいと思ったの(笑)。こうすればみんながみんなキレイな字書けんじゃんと思ったの。そうすると怒られんだよね。『自分でちゃんと書きなさい』って言うの。結局それは『上手に真似しろ』っつってるだけじゃないすか」
●でも点数つけるからね。
「ねえ。よくわかんないっす。だって芸術でしょ、結局は。何かのとおりにやったところでね、そんなのモノマネ大会じゃないすか。モノマネの上手な人に賞が贈られるだけじゃないっすか。美術もそうですよ。色の塗り方とか指定されますからね、『筆を置くように塗っていきましょう』って」
●音楽はどうだった? 最初っから音楽は答えのないものだった?
「うん、僕は作詞作曲ずっとやってましたからねえ。バンド始めた時はコピーもやりましたけど、あんま音楽でお手本っていうのはなかったですね」
●どういったものを作ってたの? 最初。
「たんこぶの歌とか作ってました(笑)」
●それって日記のように?(笑)。
「いや、たんこぶが出来た瞬間ですね(笑)。今歌うこともできるんだよ(笑)。できるけど歌わないよ(笑)」
●ハーモニカで吹いてよ(笑)。
「そんなの絶対しない。恥ずかし過ぎる(笑)。たんこぶが出来た瞬間に僕、鼻水が出たんです。頭打った瞬間に鼻水がブッと出たんです。その、鼻水は突然出たんだけど、たんこぶはゆっくりと膨らんでいくっていう、その瞬発力とゆっくりな感じと、そこに何か感じたんだろうな(笑)。たんこぶはゆっくり大きくなっていくけど鼻水は急に出てしまったみたいな、すごいね……淡々と歌ってました」
●それはゆっくりした曲なの?
「ゆっくりで、突然速くなる。鼻水をズッと吸うじゃないすか。それを歌う時に速くなるんです」
●ははははは!! 聴きてえ(笑)。
「聴きてえか(笑)。聴きてえだろうなぁ。歌えねえ自分がちょっと悔しいよ(笑)」
●そこまで裸になれないよね、マイクを前にね(笑)。
「そうそうそう」
●じゃあフジにとって音楽というものは、自分がその瞬間に思ったことを自分の代わりに言い表わしてくれるものだったのかな。
「いや、そんなことは思わなかったっすけど」
●だって今の話聞いてると完全に日記だよ。
「ま、そうかもしれないっすねえ。今はほんとそう思いますよ、音楽以上に自分のことを表現できることはないだろうなと思います。いくら言葉重ねても事実から遠ざかってる気がするし、自分が伝えたい気持ちの中心から遠ざかってる気がするし。音楽が自分の言語になってるっていうのはね、ガキの頃とかはそんなのべつに考えてなかった」
●そうだよね。子供の頃はもっとわかって欲しいし、説明をするよね。
「うんうんうん」
●そういうところで「なかなか難しいなあ。わかってもらえないなあ」って感じたことが、音楽で答えを求めていったり、音楽を響かせていくエネルギーになったりとかしたの?
「いや、結果オーライな気がしますけどね。“ギターに出会った。俺の求めてたものはこれだ。これでみんなに俺のことわかってもらえるんだ。俺の叫びを聴いてくれ!”みたいな、わかりやすい流れは本当になかったので。ギター流行ってたからやったって感じだったしねぇ。ま、歌うことは好きだったですね。小学校高学年とか中学校ぐらいになると、男子とかみんな歌わなくなりますよ、音楽の授業とかね。俺はちゃんと大きな声で歌ってました。ただまあ、“それが自分の生きる道”みたいな大それたことは一切考えてなかったし」
●でも歌ってたら仲間が出来たんだもんね。『いつも歌ってる奴がいる』って升がバンドに誘ってくれたんだよね?
「そうそう(笑)。遠足とかのバスの中でもカラオケ大会みたいになるわけですけど、よく『基央、歌ってくれよ』みたいになりましたねぇ、そういえば。で、クラスのカワイコちゃんと♪夏、夏、夏、夏ココナ~ツ♪」
●デュエットしたの?(笑)。
「♪ 小麦色に焼けてるおまえのせいさ~♪ってあるじゃないっすか。その子が本当に小麦色で、俺笑っちゃいましたけどね(笑)。ホンットに小麦色でね、カッとこう……なんでもないっす、すいません(笑)。瞳はパッションブルーでしたね、そん時はほんと(笑)。夏泥棒、はい(笑)」
●ははははは。じゃあ何の歌でもよかったんだ。
「何の歌でもよかったですよ。あ、でもやっぱ歌ってて楽しい歌がよかったっす。だから今歌ってた歌もAメロのオンコードの感じがすげぇ気持ちいいと思って歌ってたんだと思います」
●いつぐらいから、外から聴こえてくる歌を歌うより、自分の中から出てくるものを音楽にしていくことのほうが、歌っていて気持ちよくなってきた?
「それは子供の頃からあったんですよ。テレビでね、どっかの部族が雨乞いの儀式でお祈りしてる場面をやってたんです。そういうのって、子供が観ると爆笑なわけですよ。『なんだこいつらは!?』みたいになるわけです。素っ裸で変なお経唱えて『なんだコレ!?』って思ってたわけです。やってるほうは真剣でしょうけどね。それを歌にしたりしてましたね。笑ってくれるわけです、大人はね。おひねり投げてくれるわけです。だから歌うのは好きでしたねえ。自分で作ったほうがウケるっていうのわかってましたね(笑)」
●賢いね(笑)。
「うん、その辺は狡猾でした。……そうだ、いろいろ思い出してきた!歌はすごい作ってました、本当に。ピアノがあったんすけどね。ピアノは練習したんです、『やさしいバイエル』とかそういうの見ながら。で、『卵を持つようにやりなさい』って言われたんです。でも俺はその頃からビリー・ジョエルをずっとビデオで観てたので、ジャズ・ピアニストの人達が叩くようにベタッとやってく、あの手がすごいカッコいいな、ああいうふうにやりたいなと思ってて。でもこういうふうに弾く練習をすると怒られるわけです、お母さんとかピアノの先生とかに。で、らちがあかないってことになって、鍵盤のすぐ縁のところに画鋲を置かれるわけですね、ザーッと。『痛い!』ってなるじゃないすか。そんなもん卵を持つように弾いたって刺さりますよ。でも『これで大丈夫』みたいな顔してるんですよ、親はね」
●………危ねえなあ。俺が爪を噛む癖を直させられるために、爪に正露丸塗られたのとはわけが違うね。
「ははは。でもいわゆる教則なわけじゃないすか。必要なわけじゃないすか、上手になるためには。きっと理に適ったフォームなんですよ、この“卵を持つように”っていうのは。でもそういう練習よりも、自分でピアノで曲を作ってたな。ま、ほんと幼稚なもんだったけど。そっちのほうが楽しかった」
●藤原の曲は、ブルースとフォークがものすごく根深いところで根付いてる音楽だと思うんですけど、そういったエッセンスを自分の中にもらった時期っていうのは、そんなに昔じゃなかったわけ?
「ブルースは、高校ぐらいになってサザン・ロックと出会って『すげぇいい』と思ったんですね。だからブルースよりもサザン・ロックですね、どっちかというとね」
●それは自分の歌いたいこととコード感みたいなものがピタッとハマったから?
「いや、音楽として好きだったんでしょうね。コードの話をしてもいいですか?」
●はい。
「Dから始まったら2つめのコードがCに落ちていく感じ。で、Gに落ち着いてまたDに戻る感じ。あのー、聴いてる人はもしかしたらわかんない人いるかもしれないすけど、もし楽器を持ってる人がいたら確かめてみてください。サザン・ロックではけっこう王道とされてるコード進行なんですけど、それがすごく気持ちよかったですね。“リトルブレイバー”とかもまさしくそんな感じです、Aメロとか。なんか“泣き”にもってってない感じがいいんじゃないすかね、うん」
●はははは。
「コード進行の話を続けると、最近これやってる人多いんすけど、Cから始まったらGにいって、Amにいったら次EmにいってFにいって、っていうのがあんま好きじゃないっす。いわゆるだからフォーク・ソング的なね。クラシックで言えばなんだろう、“G線上のアリア”とかそうなるのかなあ。いや、綺麗だとは思うんすけどね、『さあ、感動してくれ!』みたいな感じのコード進行よりも、そっちのほうが好きだったな」
●センチメンタル過ぎる?
「うん。あまりにも綺麗過ぎる。で、サザン・ロックが好きになって、オールマン・ブラザーズ・バンドとかレイナード・スキナードとか死ぬほど聴きましたねえ。そういうもののルーツを辿っていくと、カントリーだとかブルースだとかがあるわけですね。そういうとこからだと思うんだけど、ブルースを感じるのは。だからロバート・ジョンソンとか聴きましたけど、いいなとは思いましたけど、レイナード・スキナードほど聴きはしなかった。どっちかっつうとサザン・ロックを聴いて育ったであろう80年代ハードロック・バンド達? スキッド・ロウとかそっちのほうがよく聴きましたね」
●ボン・ジョヴィも好きだったしね。
「ボン・ジョヴィも聴きました。それはもうみんな聴いてました、高校の時は。ボン・ジョヴィ知らないと話ついていけなかったからね。ボン・ジョヴィ、ミスター・ビッグとかその辺は知んないと。で、みんなあれ練習したんです、“グリーン・ティンテッド・シックスティーズ・マインド”っていう曲、ミスター・ビッグの。あんなの弾けるわけないっす。俺も『その曲いいよね』とか言いつつも、レイナード・スキナードとかをひとりで練習してたわけですよ」
●悔しくてミスター・ビッグを練習したりはしなかったの?
「いやいや、俺、速弾きとか全然練習しなかったです。そういうテクニックを披露するような意識はなかったですね。基本的にやっぱ伴奏楽器、和音。で、リフ的なものがあるとすれば、和音が音楽としてリズムと出会った時にリフになるみたいな、そういう感じでギターにのめり込んでったかな」
●ちょっと逸れるけど、負けず嫌いだよね。
「ま、たぶんそうだと思います(笑)」
●誰よりも速弾きをしてやろうとか、みんなの中に混じって勝っていくことよりも、違う中から面白いこと見つけて「フフフー」ってしていく名人だよね。
「ふふふふ。だって興味なかったんだもん、ほんと。好きな人には申し訳ないすけど、リッチー・サンボラとかポール・ギルバートとか。ボン・ジョヴィとミスター・ビッグのギタリストですけど。とか、イングヴェイ(・ヨハン・マルムスティーン)とか。こないだ韓国行った時に対バンしててびっくりしたんすけど、スティーブ・バイとかね(笑)」
●ギター・ヒーローじゃん(笑)。
「リハに6時間も取ってびっくりしました、ほんとに。舞台の袖にトリプルネックが置いてあってびっくりしました。……そういうのとかあんま興味なかったんです、好きな人には申し訳ないすけど、音楽の方向性として。だってギターで速弾きする意味があんまよくわかんなくて。“速く速く”っつったらスポーツ的な感覚になってくる。『スポーツじゃないんじゃないかな』っていうふうに思ってましたね」
●もっと感情を表す調べみたいな感じ?
「そうそうそう。だからね、コピー・バンドの助っ人でギタリストとして入ったりもしたんす。メタリカもやりました。メガデスもやりました」
●似合わない(笑)。
「いや、好きですよ。80年代のハード・ロック、ハードコア。ハードコアって言葉まだなかったか。ヘヴィメタルとか、そういうバンド達。そうそう、ちょっと南部アメリカ的な匂いのするバンドが多かったんです。シンデレラとかもそうでした。バラードとか聴くとすぐわかったりするんですけどね。そういう匂いを感じる瞬間っていうのはすごい好きでした。お家に帰ってブラック・クロウズ練習してたりとか、そういう感じでした」
●土臭い音楽が好きだし、一番最初の海と山の話にも繋がるんだけど、やっぱり何かを踏み締めていく、ダウン・トゥ・アースなものにフジは惹かれるんだと思うんだよ。
「ああ」
●音楽的にもそうだと思う。だから自分の手の世界からこぼれ落ちたものは歌わないしね。自分の踏み締めた実感の世界だけしか歌わない。一貫してそうだもんね。
「でも、こぼれ落ちたものは、“こぼれたよ”ということは歌いますよ。“こぼしましたよ”ということは歌います。まあだから事実主義なつもりです。……ギターの流れですけど、アルペジオが好きなんでしょうね。和音でありながらちゃんとリズムと出会っていて、それで感情がそこにあって、それで伴奏しているっていう。俺にとってギターってそういう楽器ですね」
●じゃあ、歌はどういうものなんだろうね。
「歌。……歌はもう何でもないっすね、逆に言えば。メシみたいな(笑)。メシ、酸素、なんだろう……気の利いたことは言えなさそうです」
●こうやってずっと曲を作って、バンプ・オブ・チキンを続けていく中でツアーもどんどん長くなって、歌う回数も増えて、歌っていられる状態もどんどん長くなっていますよね。それは自分にとってすごく幸せなことですか。
「幸せですねえ。幸せじゃない瞬間も含めて全部幸せだと思いますねぇ。……そう思います。あのー、『俺は歌うために生まれてきた』とか思わないですよ。思ってなかったっすよ。でも、今は思います。何を思うかっつうと、歌えなくなったとしたらもう死ぬしかないなっていうのは(笑)、もう笑っちゃうくらい本気で思います、本当に。それはほんと、どう考えてもそうしかあり得ない。『歌わなくなったら俺死んじゃうよ』みたいな、『うさぎは寂しいと死んじゃうよ』みたいな。そういう不思議な感じじゃなく、物理的にやってけねえなと、生命体として」
●ははは。
「それは思います。それは音楽ずっとやりながらね、25歳まで歳を取ってきてやっと思えたことだと思うんです。何をするために生まれてきたかっつったら、息をするために生まれてきたんだと思うんすけど。歌うためとか、そういうカッコいいことではないと思うんですけど。でも何を取られたら死ぬかっつったら、やっぱ“歌うこと”なんじゃねえかなぁ。『まぁたカッコつけて』とか言われっかもしれないすけど、ほんとそう思っちゃいますね、なんかね」
→Chapter.3へ続く。
Last Update : 2004年12月16日 (木) 01:43